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映像四郎の百人斬り

映像四郎の百人斬り

「マルドロール」編

 「ウサギマン深夜の決闘」



 「ウサギマン」は、暴力衝動を秘めている。

 飲むと、あらわになる。



 去年の仲間内での忘年会では、

 私の職場の忘年会に乱入してくれた。

 しかも、風俗の看板を、ガンガン蹴りまくってきた。

 どうしようもない正義の衝動に、駆られてしまうのだ。

 ウイスキーボトルを一本あければ、やばくもなる。

 飲んでも、エロくならないのが、救いだといってる。

 確かに、この勢いで、エロくなられたら、

 何人の女性が、レイプされるか、わかったものじゃない。

 しかも、記憶が、飛ぶ。

 たいてい、スクランブル状態のことは、忘れている。

 そのとき「ウサギマン」の行きつけの飲み屋に、

 タクシーで、護送するとき、

 私は、さんざん、ちんちんを握られてしまった。

 仕方ないので、私も、握り返してやった。

 (注)ホモではない。



 そして、本日、深夜2時、

 その「ウサギマン」から、電話がかかってきた。

 今から、人を殺すらしい。

 例の行きつけの飲み屋、常連客のW氏が、

 実は、空き巣で、仲良くなっては、

 常連客の家を荒らしていたのだ。

 「ウサギマン」は、W氏の部屋の前にいる。

 時折、W氏は、窓から、外を、覗いている。

 そこは、W氏の女の部屋だ。

 実況中継は、続いてゆく。

 「ウサギマン」は、全裸で、

 出刃包丁を持ち、突入するらしい。

 マジかよ。

 「正義のために、華と散ってくる!」

 完全に、酒の回った調子で、叫んでいる。

 「今なら、いい絵が、撮れるぞ!」

 その言葉が、私の琴線を打った。

 「待った、今からいく」

 「いや、くるな」

 私は、電話を切り、ビデオカメラを、ウエストポーチに詰め、

 タクシーに乗った。



 近辺に到着し、電話した。

 「え、きちゃったの?」

 「今から、撮りますわ」

 「くるな、ゆうたやん」

 ダチの部屋に、緊急避難しているらしい。

 保釈金を払って、娑婆に戻ったW氏は、

 殺人鬼と化している。

 逆恨みで、化け物のごとく、

 近所を走り回っている。

 だから、明日の裁判に、

 聴講にいくだけにする、とのたまう。

 仇討ちの行く末を訊くと、

 ノリが、通用しなかったらしい。

 そこまでの、理性は、残っていたのだ。

 空振り。




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